インターネットがバーチャルであると本気で考えている人が、いまだにおられます。元をただせば、インターネットがバーチャル空間に存在すると言われる理由は、インターネットの仕組みそのものに由来します。
インターネットというのは、さまざまな種類の回線を経由しているのにも関わらず、まるで一本のケーブルで接続されているように情報伝達できる通信方式を指しています。
つまり、送電線網や電話回線網のように、あらかじめ専用のケーブルを設置して送電や通信を行っているのではなく、既存のケーブルを拝借して「仮想の」通信網を構築することをインターネットと呼ぶのです。
このような経緯があるために、ネット⇔バーチャル(仮想現実)という考え方だけが残ってしまい、現実には一度も出会っていないにもかかわらず、ネットを通じて意見や想いを共有できるものが、インターネットであると勘違いされてきたように思います。
スマホやタブレットPCがこれだけ普及してきた現在、もはや「ネットはリアル」だと考えを改めないと、不自然なことが増えてしまうのではないでしょうか。
営業マンは、毎朝のメールチェックから仕事が始まり、インターネットで訪問先への経路を調べるのが当たり前です。インターネットは直接、リアルなビジネスへと繋がっているのです。インターネットビジネス関連の社長が、大盤振る舞いをしてテレビで紹介されるのも、もはや日常茶飯事であることにも繋がっています。
これとは逆に、インターネットがなかった時代でもバーチャル風なおつきあいは、いくらでも存在していたと思います。手紙や電話だけで成り立つ人間関係も盛んであったはずです。たとえばペンフレンドがそれにあたるでしょうし、日本の場合は、年賀状や暑中見舞いなどがあります。
インターネットの匿名性が問題であると考えるお方も、おられるでしょう。しかしながら日本では、ずっと以前から、匿名のおつきあいなど、数え切れないぐらい存在します。接客業で使われることの多い源氏名も、お相撲さんの四股名も、落語家の亭号や歌舞伎界の屋号も、全て本名を秘匿した、匿名のおつきあいとなります。
さらに、古代や中世の高貴な人々は、本名を隠して「いみな」というものを使っていたと言います。こうなってくると、ハンドルネームやニックネームで呼び合うインターネットの世界は、古式ゆかしい伝統に基づいた豊かな人間関係を育む場所ということになると言うように、私は考えています。